Acumen academy 〜IDEOが開発に関わるオンラインスクールの体験録〜

Acumen(アキュメン)という組織がある。貧困解決のために、プールしている寄付金から途上国の起業などに投資するNPOだ。このNPOがリーダー育成のために展開しているプログラムが「Acumen academy」。いくつかのコースがあり、無料で参加できる。studio-Lのメンバーに誘ってもらい、数名で参加してみることにした。参加しているのは「Introduction to Human-Centered Design」(人間中心のデザイン)というコース。僕が取り組むコミュニティデザインという仕事には親近感のあるテーマだ。世界的なデザインコンサルティングファームのIDEOがプログラム開発に協力しているということで、その仕組みにも興味を持ちながら参加している。

メールアドレスの入力など、簡単な情報入力でアカウントを作成できる。参加したいコースを選択し、自分のダッシュボードが開かれる。ダッシュボードは日本語でも表示できるが、内容に関連する言語は全て英語。このプログラムは3〜4人で参加することが推奨されていて、今回は4人で参加している。

ダッシュボード

この Human-Centered Design のコースには全部で5つの講座があって、毎回出される課題に対してチームで取り組む。5つの課題を最低4回提出すれば、達成の証がもらえるらしい。今はまだ2つ目の講座を終えたところである。無料とはいえ結構な時間を投資することになりそうなので、せっかくだし、気づいたことを記録しておきたい。

主体的に自ら学ぶことが前提のプログラム

学習の進行自体は、あくまでもシステマチックに進んでいく。ダッシュボードでは各回ごとにインプットのための資料と動画が用意されている。それらを見た上でワークシートに取り組む。宿題となる課題に取り組んで提出する。各課題には期限が設定されているが、最終課題に間に合うことができるなら、各回の課題の提出期限は厳守しなくてもいいらしい。課題を提出しても事務局からフィードバックがあるわけではないが、世界中の参加者の課題を全て見ることができる。そこにコメントすることもできるようになっている。

テキトーな感じの人もいれば資料を作り込んでいる人もいておもしろい

事務局から何か言われることはないし、講義のライブ配信などはなく、各回の課題の期限はゆるやかだし、コースを終えた証が特別な資格になるわけでもない。自分たちで資料と動画を見て、自分たちで話し合い、自分たちで課題に取り組んで提出し、自分たちでコメントし合う。いつでもドロップアウトできる。あくまでも参加者の主体性に委ねられているわけだ。

それでも、2012年に始まったというこのオンラインスクールは、現在も全世界からの参加者を抱えながらグレードアップを続けている。Human-Centered design コースには何人参加しているのか数えようとしたけど、軽く100人は越えていて数えるのをやめた。AcumenのNY本部には日本人が働いているようで、その人の2016年のインタビュー記事によると、その時点ではスクール全体で176カ国25万人が参加しているそうだ。

全部ちゃんとやると結構ヘビーだし、ドロップアウトする人も結構いそうな気がしている。参加者の意欲が問われる。「あれめんどくさいよ」という噂も広がりそうなものだけど、約8年間も続いていて人気もあるということは、参加者の意欲を引き出し続ける何かがあるのだろう。

全5回のうち2回を終えた時点で感じているのは、一緒に参加するチームメンバーと進め方が重要そうだということ。studio-Lチームでは、課題に取り組む前に議論する時間を設けるようにしている。インプットの資料を題材にあーだこーだ言いながら、ワークシートに取り組んでいる。平気で3時間くらいかかるけど楽しい。現場にも使えそうなアイデアも色々と出てくる。これがもし1人だったら、僕は絶対にドロップアウトすると思う・・。

テキストのクオリティが高い

Human-Centered design コースは、いわゆるデザイン思考のステップに沿って設計されている。人間中心のデザインに取り組むには、対象となる課題の渦中にいる人たちのことをとことん知ること(Inspiration)、そこからインサイトを探り当てて課題を設定し、アイデアをたくさん出すこと(Ideation)、プロトタイプの作り直しを重ねてソリューションに仕上げていくこと(Implementation)。ざっくりとこんな感じのステップだ。そのステップが5つに分かれて講座になっている。2回目の現在は、「Inspiration」についてインタビューや観察の手法が解説されたところだ。そのインプットのための資料が結構なボリュームで丁寧に作り込まれている。例えば「インタビューをする時は一般的な人だけではなく極端な特徴をもつ人も対象にすること」といった考え方の部分や、「インタビューする時はインタビュアと記録係と写真係を用意すること」といった細かなノウハウまで説明されている。

視覚的にデザインされた資料はPDFだが、テキストのみを抽出したwordファイルもダウンロードできるようになっていて、そこに色々と書き込むことができる。僕は英語のまま全てを深く理解できるほど英語力が高くないので、このwordファイルに日本語訳を貼り付けながら資料を読み進めている。丁寧な英語が使われているためか、Google翻訳がかなり正確に日本語訳を示してくれる。世界中、色んな母国語をもつ人が参加できるための配慮もされていると感じる。(とはいえ、チーム内に英語に長けた人もいることも重要だと思う。今回はたまたま、チームに1人ネイティブレベルのメンバーがいる)

ちなみにデザイン思考の特性でもあるが、アイデアはスケッチすることが強く求められており、参加者がアップロードしている課題もイラストつきが多い。言語がわからなくても内容はなんとなくわかる。

最後までやりきることができるのか、その時どう感じているのか・・

Covid-19の影響であらゆるコンテンツがオンライン化されており、その影響はもちろんコミュニティデザインの現場にも及んでいる。そこで今回は、このドキュメントベースのオンラインスクールがどのような仕組みなのかを知りたいという動機もあった。これをチームでやり抜いた時にどんなことを感じているのか、それを体験するには最後までやりきるしかない。今のところは楽しいチームのおかげで続いている。ここからどうなっていくのか、また続報したいと思う。

とりあえず、がんばりまーす