公共空間の活用を考える2冊

コミュニティデザインの仕事では、公共空間の活用方法を考えることも多い。つい最近、とても参考になる2冊の書籍が立て続けに出版された。大阪府立大学准教授の武田重昭さん編著の「小さな空間から都市をプランニングする」と、東京大学助教授であり「ソトノバ」編集長の泉山塁威さんが携わった「ストリートデザイン・マネジメント」である。お二人とも実際にお会いしたことがあり、日頃から非常に役立つ知識をいただいている方々なので、この2冊も即購入。今回も役立つ知識をたくさんいただくことができた。この2冊を少し紹介したい。

小さな空間から都市をプランニングする

最近は、空き地・空き家や公共の未利用地などの活用事例が増えてきている。地域の人たちに愛される空間には、様々な要素が組み合わさっている。それは当事者たちの熱心な活動はもちろんのこと、その活動が開かれた空間で取り組まれたこと、それに地域の人たちが反応し仲間が増えていき、地域全体に広がっていくこと、そして、それらの機運を高めるきっかけになった行政の政策転換やサポートなど、が挙げられる。

そんな状況を読み解きながら、柔軟に都市全体の取り組みを計画していくことの重要性について、国内の16事例を用いて解説されている。西日本の事例が中心だが、浮庭橋(大阪市)やなぎさのテラス(大津市)、仏生山温泉(高松市)など、いまや観光地にもなっている身近な場所の背景も知ることができておもしろかった。小さな空間を活用していこうという人たちはもちろん、それらをどうサポートしていこうかと考えている行政職員の方にもぜひ読んでいただきたい。

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ストリートデザイン・マネジメント

ストリートには様々な活用方法がある。丸の内仲通りや大阪の御堂筋のように歩行者が楽しめる空間づくりもあれば、博多の屋台街のように独特のカルチャーを生み出している事例もある。これらは市民や企業による創意工夫と、行政による制度設計がうまくデザインされて実現している。そして両者を調整できる組織体が作られ、持続的にマネジメントされている。その実現過程について、アメリカなどでは「社会実験」という短期間の試行を経て政策や制度に反映していくという潮流があり、近年では日本でも導入されつつある。

そこには具体的にどんなプロセスがあったのか、国内・海外の23事例を用いて解説されている。最近、賑やかな街路や広場が増えてきたな・・と感じる人も多いと思う。それは実は、地元でも実現できることかもしれない。そのための手段やアイデアについて知ることができる。制度設計から組織体まで様々な事例が整理されていてわかりやすかった。こちらも「小さな空間から〜」と同様、行政職員にもおすすめしたい1冊である。

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