Acumen academyを終えて 〜IDEOが開発に関わるオンラインスクールの体験録②〜
今年4月から6月にかけて、「Acumen academy」というオンラインスクールの「Introduction to Human-Centered Design」(人間中心のデザイン)というコースを受講していました。
途上国での起業などをサポートする非営利組織Acumenと、世界的なデザインコンサルティングファームのIDEOが協力して開発したコースです。このコースは無料で受講できます(有料版もあるようです)。
全5回のコースで、2回目を終えたところでの感想をこちらの記事に書いていました。今回は最後まで終えた後の感想を書きたいと思います。
コンテンツ
カリキュラムの全体像
全5回の大まかな内容は以下のとおりでした。デザイン思考を実践的に学ぶ内容になっています。
①イントロダクション:Human-Centered Designの概要
②観察とインタビューについて学ぶ
→テーマを設定する。文献調査やインタビューを行う(宿題)。
③アイデアのつくり方を学ぶ
→ターゲットを具体化する。アイデアの切り口となる仮説を立てる(宿題)。
④プロトタイピングを学ぶ
→アイデアを実際のユーザーを対象に試す(宿題)。
⑤検証を学ぶ
→プロトタイピングを振り返る。アイデアをプレゼンテーションにまとめる。
先の記事で解説している通り、このオンラインスクールに講義は一切ありません。数分間の映像はありますが、基本的にはドキュメントを自分たちで読み込み、自分たちで実践します。
各回ごとに課題の提出期限は設定されていますが、極端な話、デザイン思考の素養がある人ならば、丸1日あれば1人で全カリキュラムを終えることができる場合もあると思います。
わたしの場合は、所属しているstudio-Lの仲間と4人で参加しました。各課題の期限に合わせてオンラインミーティングを行い、意見交換をしながら進めていきました。
わたしたちが提案したアイデア
まずはテーマの設定から
カリキュラム②の段階でテーマを設定します。スクールが設定したテーマから選ぶか、自分たちでオリジナルのテーマを設定するか、のどちらかです。
テーマを選ぶ際には、以下の基準に対して各自が5段階評価を行い、その合計点が高いものを選ぶ、という方法が紹介されていて、その通りにやってみました。
①テーマに対する興奮度合い
②コミュニティに与える影響度合い
③実現可能性
その結果、「若者の起業を促すには?」というテーマの合計点が最も高くなりました。そのままこれを採用。
調査を行い、仮説となる問いを立てる
調査の方法として「当事者へのインタビュー」「専門家へのインタビュー or 文献調査」「内容は違っても構造は似ている事例の調査」が紹介されていたので、その通りに実行。わたしは大学生へのインタビューを行いました。
そして、仮説となる問いを考えます。詳細は省略しますが、わたしたちは「学校では学生が起業について知る機会が不足している、特に起業の当事者に出会う機会がないのではないか」という問いにたどり着きました。
問いに対するアイデアを考え、実際に試す
問いに対するアイデアとしては、学校に“起業について何でも聞ける”窓口を設けて、希望者が来たらオンラインで受け付け、わたしたち自身はもちろん、知り合いの起業家にも協力してもらって相談に乗る、という内容を考えました。(至ってシンプルですが、ありそうでないようなサービスだと思います)
プロトタイピングとしては、学校とすぐに連携するのは難しいので、チームメンバーの1人のツテを頼りに、とある高校のグループLINEに告知することに。わずか数日の告知でしたが、高校生が相談しに来てくれました。
起業を押し付けるんじゃなくて、リラックスした雰囲気で話をたくさん聞いて、色んな可能性を提案することを大切にする。実験時も、こちらはヨガなどをしながら話を聞きました。ということで「KIKIYA(聞き屋)」と名付けて、実験結果をもとにサービスのアウトラインを考えて提案しました。
このように、机上だけで考えたアイデアを提案するのではなく、アイデアを現実世界で試した結果を踏まえて最終提案をつくる、というのもこのスクールの特徴といえます。
自主性を強く求められるカリキュラムを完遂するには
自主性が求められるカリキュラム
このオンラインスクールの特徴は、完遂できるかどうかはあくまでも自主性に委ねられている点だと思います。(あくまでも無料版の場合。有料版は未体験)
前回のブログで記した通り、ダッシュボードなどの機能はよくできていますし、教材の質も高いと思います。無料で参照できるレベルとしては贅沢です。実際、デザイン思考に関する新しい気づきはたくさんありました。
しかしコースを進めていく上では、講師や事務局とのコミュニケーションはないので、受講を催促されることもありませんし、提出した課題にアドバイスもありません。(受講生同士はコミュニケーションをとることができます)
自分たちでスケジュールを組み立て、自分たちで教材を読み込み、自分たちで話し合い、自分たちでインタビューなどの調査を行い・・・と、自分たちで主体的に進めていく必要があります。
チームで学習することによるインセンティブ
実はこのオンラインスクール、わたしは7年ほど前にも1度受講したことがあります。(ログイン画面で、思い当たるアドレスとパスワードを入れたらアカウント情報が残っていました)
その時も他の人に誘ってもらって、チームで参加したのですが、途中から集まることが難しくなって頓挫しました。正直なところ、1人でやりきるモチベーションはありませんでした。
しかし今回は、日頃から一緒に仕事をしている人たちとチームを組んでいたので、日程調整もしやすく、課題提出期限に合わせてミーティングをしていました。教材を一緒に解読しながら、新しい気づきを共有して、メモしながら進めていました。ミーティングは毎回3時間以上かかっていましたが、この時間が最も楽しかったのです。チームで進めるので、適度な緊張感もあります。
今回のような形のオンラインスクールを自主的に進めるには、少なくとも自分にとってはチームで進める方が良いなと思いました。その方が気づきが多いですし、話し合いを通じてインプットとアウトプットを繰り返すことができて、学びが深まります。これが自分にとってのインセンティブとなっていました。
これは、自分がコミュニティデザインのプロジェクトを設計する時にも大切な要素だと思いました。参加者が自主的に、お互いに学び合いながらプロジェクト進めていけるような環境をつくること。そのためのチームビルディングとインセンティブの設計。このあたりに、今回の経験が活きてきそうです。
Acumen academy とIDEOの皆さん、ありがとうございましたー!