これまでの人生に影響を与えてきた本(ブックカバーチャレンジ)

「7日間ブックカバーチャレンジ」がSNS上で流行っている。僕にもFacebooKで回ってきた。4月に入ってからほぼ毎日、Facebook上の友人の誰かがこれを投稿している。その投稿に概ね共通して書かれている説明は以下の通り。

『「読書文化の普及に貢献するためのチャレンジ」で、好きな本を1日1冊、7日間投稿するという企画。』
①本についての説明なしに表紙だけの画像をアップする。
②毎日1人のFB友達をこのチャレンジに招待。
#ブックカバーチャレンジ 等のハッシュタグをつける

これはいつ誰が始めたものなのだろう・・と調べている人たちは既にいた。どうやら2018年には海外で始まっていたそうだけど、色んな説があるみたい。

コビッドさんによる自粛生活を精一杯楽しもうと、誰かが見つけて始めたのだろう。まあいいや、僕は個人的な機会として楽しませてもらおうと思います。笑

とある方が「これまでの人生に影響を与えてきた本」という視点で紹介されていた。最近、誰かに本を紹介する時は、その人の仕事や活動に役に立ちそうな本であることが多い。ここは勝手に本を紹介するブログということで、「これまでの人生に影響を与えてきた本」でいってみよう。ブックカバーチャレンジの「7日間」に合わせて7冊紹介してみます。

1.コミュニティデザインの時代(山崎亮)

コミュニティデザインの現場に導いてくれた本

今から6年半くらい前に、コミュニティデザインに取り組むstudio-Lに仲間入りしました。会社を辞めてフリーランスとしてポツポツと仕事をしていた時に、友人たちから影響を受けて、地域に関わる活動をやってみたいと思っていた。そこで色々と調べていたら「山崎亮さん」「studio-L」を発見した。

早速、著書の「コミュニティデザイン」「コミュニティデザインの時代」を買って読んだ。当時の自分が取り組んでいたファシリテーターのような仕事、そのスキルを応用できるかもしれないと思っていた。

しかし読んでいくと、もっとたくさんの様々なスキルを身につけて掛け合わせる必要があることがわかった。

特に「コミュニティデザインの時代」には、どんな状況でどんなスキルをどのように活用しているのか、そもそもスキル以前にどんな考え方が必要なのか、現場ではどんなことが起きているのか、といったことが生々しく詳しく説明されている。

実際にやってみたいと思ってstudio-Lに加わった。現場で働き始めてからも何度も読み返し、「これってこういうことか」「本当にここまでやるんだ」「こういうこともやった方がよさそうなのか」とガイドブックのようになっていた。地域のおっちゃんに怒られた時にも「あぁ、まさに怒られたな」とこの本を開いてました。

この本にたどり着いていなかったら、今の自分はないと思う。自社の代表の本なんですが、自分にとって忖度なく重要な本です。

2.自殺論(エミール・デュルケーム)

社会の見方を変えてくれた本

時代を遡って、大学生時代に読んだ本です。社会学を学ぶ学科に入学して、教授陣が共通して「社会学の原点だから」と仰っていたのがこの「自殺論」と「プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神」。とりあえずタイトルがおもしろいと思った「自殺論」から読んでみた。

社会のことなんて全然知らない当時19歳の自分にとって、この本は衝撃が大きかった。自殺なんて個人的な問題でするもんだ、くらいに思っていた。

でもこの本では、自殺とは社会との関係性によって起きるものと言われていた。それをデュルケームは3つのパターンに分類していた。

①自己本位的自殺(孤立による自殺)
②集団本位的自殺(他者や集団の大義のための自殺)
③アノミー的自殺(社会秩序が不安定なことによる自殺)

例えば僕は高校生の時にひどく落ち込んで、精神的にしんどい時があった。その時の状況を振り返ると①に近い状況だった。他にも色々と自殺の例を見ていくと、たしかにどれかに当てはまる。

これは自殺に限らない話だと思った。目の前の現象は、それを取り囲む社会情勢や人間関係、細かな状況などが影響して必然的に起きている、という視点を持つことができた。

また自分にとって悪いことが起きている時でも、自分で自分の内心を問い詰めるんじゃなくて、自分を取り囲む状況を観察して何を変えるべきかを考えればいいと思えるようになった。

客観的に見る、というやつに近いと思います。それだけ言うと簡単なことに聞こえるけど、この小難しい本を読んで初めて納得した気がしました。

3.プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神(マックス・ウェーバー)

常識を疑うことを教えてくれた本

教授陣が仰っていたもう1冊の「社会学の原点」、「プロ倫」と略称されている本です。学生時代に岩波書店の翻訳版を読み、社会人になってから日経BPの翻訳版が出ているのを見つけて、それも読んだ。日経BP版の帯にどぎつい抜粋が書かれている。

精神のない専門家、魂のない享楽的な人間。この無にひとしい人は、自分が人間性のかつてない最高の段階に到達したのだと、自惚れるだろう

・・・これをパッと見返すためだけに帯をつけっぱなしにしている。

タイトルの通りだが、資本主義という考え方はプロテスタンティズムの「禁欲」の教えがあったからこそ成り立ったものですよ、ということが事実を整理しながら淡々と説明されている。前半は。

でも後半くらいから、どちらの翻訳書も、ウェーバーの怒気が高まってくるかのような雰囲気になる。

「資本主義」なんて1つの考え方にすぎないよ、それに盲目的に従って生きているそこのあなた、あなたは機械ですか?くらいのことを言ってくる。当時の僕はドキッとした。

ウェーバーが「プロ倫」を発表したのは1904年、日露戦争が起きていた年。その10年後に第一次世界大戦。そんな情勢の中で、彼は根本的な問題提起をしたかったのかもしれない。

4.ノルウェイの森(村上春樹)

読書への道を開いてくれた本

今でこそ活字の本を読むようになったけど、それも大学生になってからのこと。中学生を卒業するまでは教科書を読むくらいで、高校生になると教科書も読まなくなって、どちらかというと活字の本は苦手だった。

でも浪人して受験勉強してると活字もいいなと思い始め、大学生になったら小説を読もうと思っていた。

何から読もうかと思って手にとったのが村上春樹さんのノルウェイの森。高校時代のある日、休日に何をしていたかと友だちと話していて、「図書館でずっとノルウェイの森を読んでた」と言われたことがずっと頭に残っていた。当時の僕にはあり得ない行動だったから。

村上作品は一通り読んだけど、ノルウェイの森は最も読みやすいと思う。主人公は人生に迷いに迷う大学生のワタナベ君で、同じ寮に住むエリート東大生の永沢さんが「おい、ワタナベ」と呼ぶたびに妙な親近感が沸いていた。

村上さんが日本語で描写する風景や動作がすごく具体的でわかりやすくて、頭の中でシーンを具体的に想像しながら読み進めることができた。

でも徹底して具体的かつ丁寧な文章で最後までいくのに、最後は電話ボックスの中でワタナベ君が迷宮入りして話が終わる。この流れになんだかハマってしまった。

大学2年生の時に1ヶ月だけイギリスに留学した時は、日本語の本はノルウェイの森(下)だけ持っていった。留学先は日本人が全然いなくて、日本語が恋しくなるたびに読んだ。そんなこともあって100回以上は読んでると思う。そうしているうちに、読書への苦手意識はなくなっていた。

5.デミアン(ヘルマン・ヘッセ)

答えは自分でつくれることを教えてくれた本

ノルウェイの森の主人公は読書好きで、小説のタイトルがたくさん出てくる。その小説を読み、その作者の他の小説をまた読む、という読書をしていた。そこで出会ったのが、ヘルマン・ヘッセの「デミアン」だった。(ちなみにノルウェイの森に出てくるのは「車輪の下」)

主人公はシンクレールという少年。ある日、彼が地元の子どもにいじめられていたところを助けてくれたのが転校生のデミアン。

シンクレールは悩める少年。例えば裕福な家庭と貧しい家庭など、光と闇が対立するような、どちらが答えなのかわからない事象にいつも悩んでいる。そんな時にデミアンは色んな考え方があることを教える。デミアンはある日、こんなことを言う。

鳥は卵の中からぬけ出ようと戦う。卵は世界だ。生まれようと欲するものは、一つの世界を破壊しなければならない。鳥は神に向かって飛ぶ。神の名はアプラクサスという。

デミアンいわく、アプラクサスは「神でも悪魔でもある神」。破壊と創造は対立する出来事に見えるけど、同時に起きることで鳥が生まれる。神でもあり悪魔でもあるということは、対立せず共存することがありうる。

そうして対立から解き放たれた時に、自分で答えをつくっていく人生が始まる・・・のかなと解釈しました。実際にシンクレールはこのあと、自立した人生を歩むことになる。

ヘッセが「デミアン」を発表したのは第一次世界大戦中の1919年。そんな対立の渦中にアウフヘーベンを諭す本を母国ドイツで出版するのは危険かもしれないと考えたのか、最初はシンクレールという名前で出版していたらしい。

6.マネとモダン・パリ

旅行が好きになるきっかけをくれた本

東京でIT企業に新卒入社して本格的に現場で働き始めてから、毎日終電で帰ってるような時があった。土日も出社することがあった。

疲れ果てて迎えた休日は友だちに会う気力も本を読む気力も起きず、でも何かしたいからと美術館に行って絵画を眺めてボーッとする、そんな時期があった。東京には美術館がたくさんあった。

芸術にはあんまり親しみのない人生だった。知識も全くないのに、美術館に行っては説明文も読まずに絵画だけをボーッと眺めていた。

ある日、たまたま行った三菱一号館美術館で「マネとモダンパリ」が開かれていた。マネが描くパリの様子になぜかものすごく惹かれた。美術館に入り浸ったあげく、家でも絵画を眺めたいと思って図録も買った。絵画の説明を初めてちゃんと読んだ。

パリに行きたいな、と思った。それまでに海外に行ったのは2回だけ。大学生の時に短期留学でイギリスへ、NPOの国際会議でブラジルへ。純粋な海外旅行に行ったことがなかった。1人で自由気ままにパリに行きたいと思い始めた。でも仕事が忙しくて長期休暇をとれる気がしなかった。

そんな矢先、東日本大震災が起きた。いまや懐かしい計画停電。8月になっても節電ということで、夏休みは1週間とることが原則とされた。僕は1人でフランスに行くことにした。

フライトを除いて丸5日間、パリを隅々まで歩いて、あとは郊外にも出かけた。気ままに歩き回るのがとにかく楽しくて、その後は国内でもよく旅行に出かけるようになった。パートナーも旅行が好きで、パリには新婚旅行でもう一度訪れた。まさか、美術館と図録をきっかけに旅行が趣味になるとは思いもしなかった。

あぁ。早く旅行に行きたいな。

7.ハンターハンター(冨樫義博)

人生で一番長い時間読んでる本

最後に漫画を1つ・・・というのも、小説などを読み始めたのは大学生になってからなので、人生の半分以上は漫画を読んで過ごしてきたんです。

そして最もよく読んでいるのが少年ジャンプの「ハンターハンター」。僕が小学6年生の時、ワンピースとほぼ同時期に始まった漫画だ。まだ完結していなくて、もう22年間読んでいることになる。

ただし作者の冨樫さんは体調が不安定な人で、同時期に始まったワンピースはもう100巻近く出てるのに、ハンターハンターはまだ36巻。36巻が出たのも約2年前。1年以上の休載もザラで、数週間続けて連載したところで休載となる。連載が長めに続くと「がんばりすぎじゃないか」と逆にファンから心配される。そんな状況なのに根強く大人気なのは、やっぱり内容がおもしろいから。

主人公のゴンという少年がジンという父親に会うために、世界最高の資格であるハンターを目指すところから始まる。ハンターの仕事は遺跡を発掘したり、希少生物を保護したり、要人の警護をしたりなど、様々。ジンは世界最高峰のハンターの1人。

まぁ少年漫画なので戦闘が基本なんですけど、ドラゴンボールのように力勝負ではなく、「念」という特殊能力を駆使して戦う。ワンピースの「悪魔の実」のようにシンプルでもなく、発動させる条件のハードルを上げれば上げるほど高度な念能力を使えるなど、設定が細かい。また戦闘よりも調査や心理戦をしている時間の方が多く、そこでも念能力が活かされる。これがまたおもしろい。この話だけでも数時間は語れるので、ここではやめておく。

「誰が一番強いのか」がハッキリしないし、そもそも「強さ」の概念が多種多様で曖昧。基本的には冒険だが明確なゴールが見えない(ゴンはもうジンに会えたけど、ジンが本当に父親なのかもわからなくなってきている)。明確な敵がいることもあれば、何が敵なのかわからない時もある。という感じなので好き嫌いが分かれると思うんですけど、僕はこの「ハッキリしない(=色んな解釈ができる)」のが好きです。

また、この漫画は伏線がいつも張り巡らされていて、読み返した時に新しく発見することが多い。何度読み返しても、「これって実はこういうこと?」っていう発見がある。それで何度も読んでしまう。冨樫さんが1年くらい休んでいる間に、世界中のファンがあーだこーだと推論している。そんなところもおもしろい。

まあ人生に影響しているのかどうかもよくわからないけど、一番長い時間読んでる本だと思う。でも少なくとも、以下のジンのセリフは僕の人生観に近いです。

「オレはいつもいま俺が必要としているものを追ってる。実はその先にある『本当にほしいもの』なんてどうでもいいくらいにな」

「大切なものは、ほしいものより先に来た」

「オレがほしいものは今も昔も変わらない。目の前にない『何か』だ」

・・・以上!

これまでの人生に影響を与えている7冊でした。こうして見ると、20代に何度も読んだ本ばかりだな、という感じです。30代を終える頃にまたやるとおもしろいかも。

また次は「仕事に役立っている7冊」とか、そんなテーマもおもしろいかもと思いました。また、気が向いたら。。